抗体(こうたい)とは? 抗体検査すると何がわかるの?わかりやすく解説

抗体ってなあに?抗体検査とは

新型コロナウィルス感染症の流行度合いを知るため、各国で「抗体検査」を行う、との報道がありました。

NY州、20日から抗体検査
ニューヨーク州のクオモ知事は19日、全州で新型コロナウィルスについての抗体検査を始めると表明した。

20日から1日に2000人のペースで検査を始め、市民の免疫状況を調べる。

経済活動の再開に向けた判断材料の一つにする。

2020年4月20日日本経済新聞より

これを受け、テレビのニュースでも、「抗体」に関しての話題が増えてきています。

ここでも、わかりやすく解説していこうと思います。

目次 Contents

そもそも免疫(めんえき)とは?

自分自身の細胞や組織を「自己(じこ)」といいます。

「自己」ではないものをすべて「非自己(ひじこ)」といいます。外来の異物などのことです。

細菌や、ウィルスなども「非自己」ですよね。

「自己」と「非自己」を判別して、「非自己」を追い出し、除去する、という働きが免疫の機能ということです。

その免疫反応を引き起こすものを「抗原(こうげん)」といいます。

「抗原」=「非自己」ですね。

そして、抗体というのは、体に入ってきた異物「非自己」=「抗原」をやっつけてくれる武器です。
血漿(けっしょう)中に存在している蛋白質です。
※血漿というのは、血液の中の水分の部分。

免疫反応の仕組み

免疫反応の仕組みは大きく2つに分けられます。

細胞が直接関係するものを細胞性免疫、抗体が関与するものを液性免疫といいます。

この、細胞による細胞性免疫と抗体による液性免疫が一緒に働いて、免疫が作用します。

ここでいう細胞というのは、血液に存在する細胞のこと。

どういうものがあるかというと、赤血球、白血球、血小板が血液中の細胞です。

免疫にかかわる細胞は白血球です。白血球にも種類があって、その中の、①好中球、②マクロファージ、③リンパ球と言われるものが免疫に関与します。

免疫にかかわる細胞でも、色々な関わり方があります。

①好中球、②マクロファージは、細菌や異物が体の中に侵入してきたとき、それに近づいていって、取り囲み、分解・消化します。
「非自己」を食べてしまうといってもいいでしょう。

残りの③リンパ球というのが、「非自己」=「抗原」をやっつける「抗体」を作りだします。

リンパ球にも2種類、TとBがありますが、抗体を作るのはBリンパ球と呼ばれるものです。
※正確には、Bリンパ球とさらに分化した形質細胞と呼ばれるもの。

抗体とは

抗体は、体に異物が入ってくるとそれを無毒化したり、やっつけてくれるものです。
わかりやすく抗体=武器といってもいいでしょう。

抗体は1種類の抗原(異物)に対してのみ、効果を発揮する武器です。

つまり、インフルエンザのウィルスに対する抗体と、コロナウィルスに対する抗体はまるで違うもの。
例えば、インフルエンザウィルスに対する抗体をもっていたとしても、コロナウィルスはやっつけられない、というものなのです。

そして抗原(非自己)に出会わなければ、抗体は身体には存在しません。

初めての敵をやっつける武器を、人間は持っていないのです。

今、流行している新型コロナウィルスは、我々が出会う初めての「抗原」=「非自己」。
つまり、新型コロナウィルスに対する「抗体」、いわば武器・対抗策を持っていないので、これほどまでに無防備に感染してしまうのです。

抗体があると・・・

あるウィルスに感染しました。そしてそのウィルスに対する「抗体」が作られました・・・という経験があるとします。
(もちろん自分では気づきませんけど・・)
2回目に同じウィルスが体の中に入ってきた時、2度目の遭遇なので初めての感染よりも素早く大量に抗体が作られます。

Bリンパ球が、そのウィルス(=抗原)を記憶しているからです。

同じウィルスが体の中に入ってきても、それをやっつける抗体(=武器)がすぐ出来上がるシステムのおかげで、
2度目の感染の時は、そもそも感染が予防できたり、すごく軽く済んだり、症状が出なかったりします。

「ワクチン」などの予防注射は、前もって少量の抗原を体の中に注入して、「抗体」を作る体制をあらかじめ整える役割をもっているのです。

人工的に軽い感染を起こして、抗体を作っておけば、本物の病原菌が体に入ってきたときに、Bリンパ球はすぐ反応して、
その病原菌と戦える「抗体」を大量に作りだすことができるのです。

抗体検査をすると何が分かるか

今、新型コロナウィルス感染症の流行の状況を調べようとして「抗体検査」が実施されている国も増えてきているようです。

新型コロナウィルスは、感染しても症状がでない場合が多いようです。そのことを「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」といいます。

このウィルスの最も厄介なことは、症状が出ていなくても、感染力はあるということ。自分が感染者だと気が付かないうちに、人へと感染させてしまうのです。

抗体検査は、自分でも気が付かないうちに新型コロナウィルスに感染した人、およびいつの間にか治った人がどのくらいいるのかを調べることができます。

そうすると感染力や重症化の割合など、新型コロナウィルスに関する情報が増えていきます。

米スタンフォード大などの研究チームは19日までに、西部カリフォルニア州サンタクララ群の住民を対象に新型コロナウィルスの抗体検査を行った結果を公表した。

ウィルスに感染した人は4月初めの時点で同群の人口の素系2.5%~4.2%に上り、確認されている感染者の50~85倍に及んでいる可能性があるとしている。
2020年4月20日 日本経済新聞の記事より

報告されている感染者以上に、抗体を持っている人がいた、という結果です。

抗体があれば安心?

では、新型コロナウィルスの抗体を調べた結果、自分が抗体を持っていることがわかったら、もう安心なのでしょうか?

残念ながら、まだまだ分からないようです。

未知のウィルスなので、抗体ができたとしても、その効果が一生続くのか、1年続くのか、すぐなくなるのか、何も分かっていないのです。

そして、抗体検査自体の正確さにも、まだ問題がありそうです。

理想ですが、抗体を持てば一生かからずに済んで、安全なワクチンができる、というのが人類にとっては安心ですが、それら希望的観測、超楽観論というもの。
まだまだ新型コロナウィルスとの共存は始まったばかり、世界の研究者たちの報告をまつばかりです。

そして私たちにできることは

◆医療従事者の方たち、物流や販売、交通その他を維持してくれているエッセンシャルワーカーの方たちに感謝しつつ
◆無防備に感染しないようにステイホーム(Stay home)する。

みんなで頑張りましょう。

参考文献:生理学(東洋療法学校協会編)
     イラストで学ぶ生理学

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